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ボロフェスタオフィシャルカメラ・ライターたちがボロフェスタ2017にまつわるあれこれをレポート

ナノボロフェスタ直前! livehouse nano店長、土龍インタビュー

ボロフェスタ主催者のひとりで、livehouse nanoの店長である土龍(モグラ)さん。ボロフェスタでは最初のMCでおなじみの、あのファンキーな「お祭り男」(本人談)にインタビューしてきました。親しみやすくて個性豊か。優しいだけじゃなくて時には、バンドに対して厳しい意見をぶつけることも。多くのバンドマンに好かれるそのストレートな情熱と、ライヴハウス誕生物語をたっぷり語っていただきました。

 

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――そもそも、どういうきっかけでライヴハウスをはじめたんですか?

ボロフェスタの初期の運営メンバーに、加藤隆生さん*1って人がいるんだけど。加藤さんのおばさん、通称まーこおばちゃん(livehouse nanoオーナー)に誘われたのがはじまり。俺が大学卒業した年の秋に、「実はライヴハウスをはじめようと思ってるんだけど、もぐらくん店長やってくれへん?」って言われて。俺も大学卒業してからどうしようかなと思っていたし、当時のバイト先の店長には「このままお前が社員として残ってくれたら助かる」って言われてた。でも、ライヴハウスの話が来たときに「もうこれや!」と思って。))

 

――アーティストとして生きていこうとは思ってなかったんですか?

サックスを吹いたりバンドをやったりはしていたけど、自分の演奏で生計を立てていくって気が驚くほどなかったんだよね。それと以前、友達のイベントの司会をやったことがあって、イベントを「作る側」に自分の立ち位置を見いだせるようになって。だから「ライヴハウスやらへん?」っていわれたときに、俺の将来はこれかなっておもった。

 

――なるほど。未経験に対する不安はなかったんですか?

全部が不安だったから、逆に不安と感じなかったな。PAとしての経験はなかったけど、ボロフェスタをやっていたから、知り合いがたくさんいて。営業先はたくさんあったんだよね。フライヤー配ったり、ネットの掲示板に書き込んだり、まずはnanoを知ってもらえるよううに活動してたね。

 

――知り合いが多いのは強みですね。そのあとは順調にいきましたか?

いや、「こんなに大変なもんなのか」って思ってたな。みんな「nanoに出たい」とは言ってくれるけど、出てくれない人もいて。どんだけ友達でも、バンドにはバンドの都合があってさ、出れへん日もあるから、断られることもあるやんか。今からみれば当たり前なんやけど、断られるっていうのが意外とショックで。慣れるのに結構時間がかかったかもしれない。

 

――それはショックですよね…。他にも意外なことってありましたか?

バンドマンと全身全霊で接することが、こんなに体力使うなんて思ってなかった。「本気の人間と仕事をするのはこんなに大変なんだ」って立ち上げ当初は、毎日思ってた。お客さんとのコミュニケーションに力を入れてる飲食店でバイトしていたし、はじめて会った人と接するのは得意やったから、うまくいくと思ってたんだよね。けど、バイト先で養われたコミュニケーション能力だけじゃうまくいかなくて。バンドマンは、その瞬間の生き様をみせに来るわけだからさ。

 

――その日のたった1回の本番で、バンドの生き様をお客さんにうまくみせる。その工程はとても難しそうですね。

それに関してはだんだん「慣れていく」というより、「わかっていく」感じだったな。経験を積んでいくうちに「こういう音を鳴らす人はこの音楽が好き」っていう傾向がわかってきて。「こういう演奏をする人には、こう声をかけてあげると喜ぶ」とか、接し方もわかってきたんだよね。

 

――すごいです! とても高度な接客ですね。

せやね、高級クラブのキャバ嬢みたいな(笑)。あとは、転換のBGMをバンドの使っている機材をみてセレクトするのも得意になった。そいつらの好みに的中していたら「なんで僕らの好みがわかるんですか!?」って大喜びされるよ(笑)。

 

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――バンドマンにとっては、かゆいところに手が届くような気持ちですね。

それは、nanoでレギュラーのDJパーティをやっているからだと思う。田中亮太をはじめとするDJたちに、フロアのニーズの読み方を学んできたね。DJって、与えられた時間でいかに物語を紡いでいくかが大事。ただ曲をかけるだけじゃなくて、バンドがセットリストを決めるように、DJも音楽的な作業があるんだなって思った。

 

――中には読みが外れるときや、バンドとすれ違うこともあったりするんじゃないですか?

あるある。そのバンドのやりたいことが理解できないときや、俺の好きって思える音楽じゃないときかな。例えばモーモールルギャバンはインディ時代、ほとんどnanoに出てない。当時のゲイリー・ビッチェのやりかたと、俺の考えがすれ違ってただけなんやろうけど。でも、感受性は変わっていくものやから。今はお互いリスペクトし合っている存在なんだよね。

 

――なるほど。そういった考え方や経営において、見本にしているライヴハウスとか、店長さんっていますか?

京都メトロは、目標のひとつかな。俺、メトロにいったら絶対記憶をなくすまで飲んでしまうんよ(笑)。nanoもああいうアッパーな空間にしたいな。店長だったら十三ファンダンゴの加藤さん。ファンダンゴはチケットノルマがないけど、バンドマンはみんな「お客さん呼ばなかったら加藤さんに殺される」って言うんよ。それ、俺らが大学生のときもそう言われてて。加藤さんみたいな、存在感の変わらない店長を目指したいところやな。

 

――存在感というか、土龍さんの個性は十分に立っていますよね。バンドのブログやtwitter上で「もぐらさんは好き嫌いをしっかり言ってくれる」って声もよく見かけますし。

叱咤激励しても、叱咤のほうが過ぎると、nanoに出なくなる人もいる。でも怒られるから出たくないって気持ちに対しては、「それくらいの気持ちならもう出なくてもええやろ」って思ってるけどね。

 

――なかなか厳しめのご意見ですね。バンドの意志の強さもそうですが、nanoに出るにはある一定のレベルをクリアしてないといけないわけですね?

それはすごくシンプルで、俺が好きになるかどうかが基準。「このバンドはあまり好きじゃないけど、集客力はあるから仕方なく呼ぶ」ってことはしたくない。「このバンドのどこがええねん」って思いながらPAするのは全然楽しくないし、なにか違うしな(笑)。そのやりかただと、nanoってハコの個性も出ないよね。その商売っけのなさがビジネスとしての弱点だけど、だからこそいいバンドが集まるし、いいバンドがお客さんを集めてくれた。今はたくさんのバンドが「nanoで自主企画をやりたい!」って言ってくれて、毎週末に企画が入るし、お客さんもしっかり来てくれてる。まだまだだけど、安定してきたなって思います。

 

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――ちなみに、今の京都若手バンドはどういう傾向にあるんですか?

大学生が多いけど、卒業すると就職する子が多い。働くのはいいんやけど、就職することでバンドへの熱がスッと冷めてしまう連中が多かったりしてさ。3年前くらい、メシアと人人の同年代はいいバンドがたくさんいて、「この先楽しみやなあ」って思ってたのに、結局残っているのはひとつふたつとか、そのくらい。大学生が在学中にバンドをどんどん良くしていって、大学生じゃなくなったときにどうなるのかが、京都のバンドのみどころだと思ってる。

 

――言い方は悪いですが、寿命の短いバンドが多いんですね。

そう。デモ持ってきてくれるんだけど、メンバーは4回生で、就職先も既に決まっていることがよくあって。その学生には「ある程度実力をつけないと、nanoには行けません。みんなそう言うてます」って言われた(笑)。そういうバンドをもう少し早い段階からみていて、光るものをみつけられていたら、もっといい目をみせてあげられたと思うんだよな。

 

――それが、nanoの今後の課題ですか?

いや、バンドマンをどうしたいというより、nanoのブランド力を高めたいって思ってる。お客さんからお金を出してもらえるレベルの演奏をするバンドにしか、出てほしくないからさ。大きいハコよりもかかる経費が少ないぶん、ハコの個性を武器にしたいね。

 

――バンドマンをどうしたいというより、nanoを変えていきたいと。

うん。お客さんからお金を出してもらえるレベルっていうのは、知名度とか、音源の売り上げとかじゃない。「nanoで演奏したいです!」って飛び込んできたやつの中で、「むっちゃええ曲を書く」とか「バンドの熱量がすごい」とか、なにかしら光るものを持ってることかな。

 

――なるほど。いいバンドだったら、ボロフェスタにも出演できますか?

ボロフェスタに出るとなると、ビビッとくる音楽が前提として、ライヴのクオリティがいいのが条件になってくるかな。その基準も変だけど、「俺が泣いたことがあるかどうか」。あと、周りでなんとなく話題になっているバンドかどうかも大事だね。

 

――今回ナノボロフェスタに出演するバンドもそうやって決まったんですか?

 ナードマグネット、渚のベートーベンズ、私の思い出とかがそうかな。そのへんの京都のバンドは、ブッキングを決めるときに俺から提案した。ナノボロフェスタは、「ボロフェスタ」って冠がついている以上、全国の音楽好きが反応するようなラインナップじゃないといけない。でもボロフェスタの冠を利用して、俺のセレクトをみんなにみてもらいたいっていう気持ちも入ってるのよ。

 

――最後に、今年のナノボロフェスタについて意気込みをどうぞ!

 今年もONIGAWARAとかnever young beachとか、「今みたいアーティスト」を大切にしました。日曜日のバンドはカオス寄りなものが多くて、土曜日はポップ寄りにしたとか、雰囲気ををあえて分けてみたので面白いですよ。ボロフェスタだけじゃなくて、nanoもライブハウスとしてアッパーなノリを持っていてるから、盛り上がりそうなときに、盛り上がらないことがないくらいなんだよね。特に二日目はクラウドサーフが連発するんじゃないかと思う。それも、俺からいくしかないんじゃないかな (笑)。とにかくナノボロフェスタ2015、絶対の自信があるんで来てください!

 

――当日も楽しみにしています! ありがとうございました。

 ありがとうございました!

 

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ついに明日はナノボロフェスタですよ!

「花金!梶原綾乃のボロフェスタへの道」では、ナノボロフェスタの様子をリアルタイムでお届けします。

 

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*1:2008年までボロフェスタの主催者のひとりで、ロボピッチャーのヴォーカル・ギター担当。リアル脱出ゲームで有名な株式会社スクラップの代表取締役